コンピュータ科学者がめったに語らないこと

コンピュータ科学者がめったに語らないこと

コンピュータ科学者がめったに語らないこと

Donald E. Knuthが「信仰とコンピュータ科学の相互作用」という副題でMITで行った講義に関する本。
コンピュータ科学と宗教を結び付けるなんて考えてもみなかった。面白い。Knuthが宗教にこんなに興味の深い人物だとは初めて知った。
まだ第1回講義しか読んでないけど、ー箇所おもしろい質疑応答があったので引用。

だれかに「どうしてコンピュータ科学は1960年代にあれほど急速に具体化して、世界中ほぼすべての大学で学部となったのか」と質問されたとしましょう。コンピュータが道具と同じように非常に便利だったことが理由ではないと答えますね。電子顕微鏡は素晴らしく強力な道具ですが、どの大学にも電子顕微鏡科学の学部があるとは限りません。

コンピュータ科学が急速に成長し、今では不可欠となっている理由は、独特の思考様式を持つ人々が世界中にいることだと確信しています。

-- 中略 --

コンピュータ科学の思考方法の顕著な特徴として、抽象のレベル間で高レベルの抽象と低レベルの抽象をほとんど無意識に素早くジャンプできることがあります。もう一つの大きな特徴として、コンピュータ科学者にはケース1、ケース2、ケース3、のように認識される一様ではない構造を扱える能力があることです。一方数学者は系全体を支配する一つの統一的公理を欲する傾向があります。この2番目の側面はコンピュータ科学の弱点となることもあります。つまり、一つの公理によって説明し得る状況に遭遇したときでも、五つも法則を考え出すかもしれません。しかし、コンピュータ科学者が本領を発揮するのは、単一原理では不十分なときで、そんな場合、個々の異なるケース間の差異を非常にうまく処理することができます。

独特の思考様式というのは分かる気がする。塾で高校生に数学を教えているのだけど、一人一人の演習の添削をしているとそれぞれ思考方法が全然違う事が分かる。本を一度読んで頭に入ってしまう子もいれば、人の10倍読まなければ頭に入らない子もいる。記憶力の善し悪しではなくて、残念ながら根本的に物事の考え方が得意な子と苦手な子では異なっているのだと思う。
コンピュータ科学に向いた考え方の人間というのがいても当然だと思う。自分はどうなんだろうな〜。